最近は「女優」と聞かなくなった
令和の時代に入り、最近はテレビで「女優」という言葉を聞かなくなりましたね。
以下の職業の呼び名と同じく、仕事における男女の区別を無くそうというポリコレ(ここでは男女という区別を無くしていこうと考える人たちの政治的な取り組み)の一環だと思います。
- スチュワーデス→キャビンアテンダント
- 看護婦→看護師
- ウグイス嬢→アナウンサー
ただ、女優または俳優という職業への進出に、元々男女格差はありません。
それに俳優以上に女優という職業には、「憧れの職業の一つ」というイメージを持つ人の方が多いかと思います。
だからこそ「女優」という呼び名を無くしていく今のポリコレには、抵抗をおぼえる人が多いんじゃないんでしょうか?
当事者である女優(俳優)さんたちにも抵抗を感じている人がいるようで、自分たちを「俳優」と紹介されることに違和感のある人も多いみたい。
女優の川上麻衣子が、メディアで肩書が女優ではなく「俳優」と表記されることが増えてきた風潮について「女優はその響きへの憧れもあり、私としては無くしたくないニュアンスがある」と意見を表明。同業の女優から「自分のことを俳優と呼ぶことに違和感」といった声も寄せられ、ネット上で議論を呼んでいる。
https://www.cyzo.com/2024/02/post_362968_entry.html
もちろん逆に、この流れに賛同する人もいるようで、しばらくは「女優」「俳優」どちらも見かける機会が続くと思います。
その一方、2021年には元AKB48の秋元才加がSNSで「私は女優って肩書きが正直しっくり来なくて色々フラットに考えたいと思った結果、時代の流れもあり俳優表記を事務所の方にお願いしました」と表明。事務所を通じて、各方面に自身の肩書を「俳優」表記で統一してほしいと求めたことを明かしていた。
https://www.cyzo.com/2024/02/post_362968_entry.html
女優さんたちの意見につきましては以下の記事から引用させていただきました。
賛否両論を見つめた良記事ですので、ご参考にどうぞ。
日刊サイゾー(文:佐藤勇馬)
URL:https://www.cyzo.com/2024/02/post_362968_entry.html
最近は「イヌイット」と聞かなくなった
さて、本題を進めていく前の例え話として、アラスカの先住民の呼び名についての話をさせてください。
あなたの年齢次第では、学校で彼らを「エスキモー」と習った人と「イヌイット」と習った人がいるのではないでしょうか?

まず現代の話をすれば、アラスカに住む先住民たちは自分たちをイヌイットと呼ばれることに抵抗があり、エスキモーと呼ばれる方がしっくりくるらしく、本人たちの希望に沿って2025年現代の教科書では、彼ら(アラスカに住む先住民)をエスキモーと紹介しています。
ここでイヌイットと習った方は、「じゃあイヌイットってなんやねん⁉」と思ってしまうことでしょう。
ここにはアラスカのお隣であるカナダ、そこに住む先住民たちに関する歴史が関係しています。
歴史と差別の絡む複雑な話なので、少し単純化して話をしますが、アラスカとカナダの先住民たちは、最初はどちらも自分たちを「エスキモー」と呼ばれることに抵抗はありませんでした。
しかし、カナダ側に住む先住民たちが、外からやってきた移民に長い間差別されたことで、元々は差別的な意味など無かった「エスキモー」という言葉に、「生肉を食べる野蛮な人」という差別的な意味が加わるようになりました。
カナダの歴史の中で、カナダの中で使われる「エスキモー」という言葉の意味が変化していったのです。
そこでカナダに住む先住民たちは「エスキモー」と呼ばれることを嫌って、「自分たちはイヌイットだ」と主張するようになりました。
これに従い現代では、「カナダの北方に住む先住民をイヌイットと呼ぶ」ことになっています。
ここまでなら本人たちの希望に沿った話で問題はないのですが、この歴史を知らない世界の人たちは、内容の一部だけを聞いて正義の暴走を始めます。
「エスキモーは差別用語だー!」と暴走し、カナダの先住民だけでなくアラスカの先住民たちのことも「エスキモー」から「イヌイット」と呼ぶようになったのです。
しかし、アラスカに住む先住民たちには”カナダの歴史”は関係ありませんので、こんな感じになりました。

「お前たちは今日からイヌイットだー!」

「は⁉意味わからんし。」

「エスキモーは差別用語だからダメなんだー!」

「差別してんのお前らやん!」
勝手に差別用語に貶めたあげく、勝手に呼び名を変える偽善活動。
エスキモーたちがそんな反応になるのは当然で、アラスカに住む先住民たちは非常に抵抗感を感じたらしく、「イヌイット」と呼ばれることにむしろ反対運動を起こします。
こうした流れからアラスカに住む先住民の呼び名は教科書上で、
「エスキモー」→「イヌイット」→「エスキモー」という感じで変化していきました。
この話の流れを次のように整理してみましょう。
- ○○という元々の呼び名に差別の意味は全く無い
- ○○と呼ばれている人たち差別する
- ○○という呼び名に差別的な意味が追加される
- ○○という呼び名はダメだと当人たちを無視して呼び名を変える
こう整理すれば、「女優」という呼び名の話と「エスキモー」という呼び名の話に共通点を感じていただけたでしょうか?
これから「女優」と呼ばれる職業
ここから本題に入っていくわけなのですが、テレビで「女優」という呼び名を聞かなくなった一方で、「女優」という呼び名を使われる意味がより増した業界があると私は思っています。
それは、AV(アダルト動画)業界です。
この世界というのは元々男女の区別が重要で、女性の演者を「女優」と呼ぶだけでなく、男性の演者についても「男優」という呼び名が使われています。
また、新しいジャンルとしてVR動画が出てきたことで、最近は女性の出演者に求められる演技力がより高いものとなっています。
つまり、彼女たちが”演技で人を楽しませる職業の女性”を表す「女優」であることの意味は増していると考えているのです。
ここで「輝星きら」ちゃんという女優さんのTikTokを紹介しましょう。
@kirakirachan0303 こういう時どうする?
♬ ランデヴー – シャイトープ
「輝星きら」または「https://www.tiktok.com/@kirakirachan0303」で探せば見つかると思うのですが、彼女はTikTok上でその演技力を見せてくれています。
TikTokの主流といえ女の子たちがダンスをするショート動画なのですが、そうではなく寸劇で勝負しているところが面白いです。
「VR動画が出てきたことで、女性の出演者に求められる演技力がより高いものになった。」
こう考えると、彼女が女の子としての可愛さ以上に「女優としての演技」でアピールをする戦略は、理にかなっていると思います。
さて、TikTokの中には自分がAV業界で働いていること、風俗業界で働いていることを隠さずに名前も顔も出している女性を多く見かけます。
今の若い世代にはそういった職業を差別的に見る人が減っているようで、可愛くてお金を稼ぎ、自信を持って仕事をする彼女たちを人気者へと押し上げる土壌があるのです。
今現在のAV業界で演者として働く女性の呼び名を考えてみましょう。
日本では、テレビや映画での俳優業である「女優」と区別して「AV女優」や「セクシー女優」と呼ばれています。
一方で、海外では「ポルノスター」と呼ばれることもありますね。
今後、テレビ側で「女優」という呼び名が消えていくなら、海外のように”スター”と評される職業としての地位を確立しつつある彼女たちを、「女優」と呼ぶ未来も近いかもしれません。
テレビで「女優」という言葉を無くすのは正しい
AV業界で演者として働く女性が「女優」と呼ばれる未来があるのならば、今、ポリコレを推し進める人々はどうするでしょうか。
ポリコレに賛同する彼らの全員とは言いませんが、その多くにはフェミニスト(本来の意味での「女性の権利擁護や男女平等、多様性を支持する人」では無い)と呼ばれる男性嫌悪者が含まれています。
若い世代で性別や職業等で人を差別する意識が消えていく一方で、彼らは”男性”や”男性と仲良くする女性”を差別する人間たちです。
彼らはきっとAV業界で演者として働く女性、つまりは「女優」を”男性に媚びを売る女性”として差別し始めるでしょう。
そして「女優」という言葉に差別的な意味を追加していきます。

「女性俳優に女優という言葉を使うな!」

「は⁉意味わからんし。」

「女優は差別用語だからダメなんだー!」

「差別してんのお前らやん!」
そうしてマッチポンプ的に憧れの職業である「女優」を悪いものとして、正義の暴走を加速することでしょう。
そんな未来がエスキモー問題から予測できますので、『テレビから「女優」という言葉を無くしていくのは正しい。』と私は思っています。
毒親のごとく「あなたのためだからー!」と当人たちを無視して行われる偽善行為が、誰のためになるかは知りませんけどね…